「薬剤師の職場は薬局だけではない」という記事はよく見かけます。ですが、それぞれに何人いるのかを書いているものは、ほとんどありません。選択肢として挙げられていても、規模が分からなければ現実味を判断できません。厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」には、薬剤師の従事先が人数で載っています。全国32万9045人が、どこで働いているのかを見てみます。

薬剤師32万9045人の内訳

薬局 60.0% 19.2% 10.4% 全国 329,045人(令和6年12月31日現在) 薬局 197,437人 医療施設 63,290人 医薬品関係企業 34,184人 その他 20,976人 衛生行政機関等 6,906人 大学 5,011人 介護保険施設 1,217人
従事先人数割合
薬局197,437人60.0%
医療施設63,290人19.2%
 うち病院57,595人17.5%
 うち診療所5,695人1.7%
医薬品関係企業34,184人10.4%
その他20,976人6.4%
 うち無職の者11,975人3.6%
衛生行政機関・保健衛生施設6,906人2.1%
大学5,011人1.5%
介護保険施設1,217人0.4%

出典:厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」薬剤師 第1表をもとに当サイトで算出。令和6(2024)年12月31日現在。「主たる業務の種別」による分類で、副業として別の場所で働いている場合は含みません。

薬局が6割、病院・診療所が2割、医薬品関係企業が1割。ここまでで9割を超えます。

ここで注目したいのは、残りの1割です。

1. 「薬局以外」は、実際にどれくらいあるのか

薬剤師の職場を紹介する記事では、企業内診療所・化粧品メーカー・学校薬剤師・メディカルライターといった選択肢が並べられます。ただ、それぞれの規模までは書かれていないことがほとんどです。

この統計で分かる範囲では、次のようになります。

従事先人数目安
医薬品関係企業34,184人薬剤師の約10人に1人
衛生行政機関・保健衛生施設
(保健所、地方衛生研究所など)
6,906人約48人に1人
大学5,011人約66人に1人
介護保険施設
(介護老人保健施設、介護医療院)
1,217人約270人に1人

出典:厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」薬剤師 第1表

医薬品関係企業の3万4184人は、決して少数派ではありません。製造販売業・製造業の研究開発や営業のほか、店舗販売業、卸売販売業などが含まれます。10人に1人という規模は、「特殊な選択肢」ではなくふつうの進路のひとつと考えていい数です。

一方、行政や大学は数千人規模。求人の数そのものが限られるため、タイミングを待つ前提で探す領域だといえます。実在はしますが、いつでも応募できるわけではありません。

「その他」の中身について

「その他」2万976人のうち、1万1975人は「無職の者」として計上されています。この区分には、育児・介護のために離れている方、退職された方、資格を持ちながら別の分野で働いている方などが含まれます。「働いていない薬剤師が1万人以上いる」という読み方は正確ではありません。

2. 年齢が上がると、構成が変わる

年齢階級別に見ると、従事先の割合は一定ではありませんでした。

年齢階級総数薬局医療施設医薬品関係企業
24歳以下1,317人55.0%30.8%9.7%
25〜29歳37,425人61.5%25.0%7.6%
30〜34歳41,661人60.1%24.0%7.5%
35〜39歳41,775人59.8%22.3%8.4%
40〜44歳37,730人58.6%19.8%11.0%
45〜49歳36,388人61.4%18.5%10.9%
50〜54歳35,188人61.7%17.3%12.0%
55〜59歳31,611人59.2%15.0%15.3%

出典:厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」薬剤師 第1表をもとに当サイトで算出

薬局はどの年代でも約6割で安定しています。変化しているのは残りの部分です。

医療施設の割合は24歳以下の30.8%から、55〜59歳の15.0%へとおよそ半分になります。逆に医薬品関係企業は7.6%(25〜29歳)から15.3%(55〜59歳)へと倍増し、50代後半では医療施設を上回ります。

この数字の読み方には注意が必要です

これは「病院を辞めて企業に移る人が多い」ことを示すデータではありません。同じ形のグラフは、次のような理由でも生じます。

  • 病院が新卒採用を多く行っており、若手の比率がもともと高い
  • 企業では年数を重ねてから採用されるポジションがある
  • 世代ごとに就職時の状況が違った(年齢の差ではなく世代の差)

この統計はある一時点の断面であり、同じ人を追跡したものではありません。「構成が変わっている」という事実までが、この数字から言えることです。

3. 働き方の柔軟さは、場所によって違う

この統計には常勤・非常勤の区分もあります。常勤は週32時間以上の勤務です。従事先ごとに、はっきりした差が出ました。

010 2030 (%) 32.3% 28.3% 11.7% 7.7% 診療所 薬局 病院 医薬品関係企業 非常勤(週32時間未満)の割合

出典:厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」薬剤師 第13表をもとに当サイトで算出。常勤は週32時間以上。

従事先常勤非常勤非常勤の割合
薬局139,998人55,843人28.3%
病院50,655人6,717人11.7%
診療所3,810人1,838人32.3%
医薬品関係企業31,342人2,640人7.7%
大学4,306人204人4.1%
衛生行政機関等6,620人235人3.4%

出典:厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」薬剤師 第13表。各行には勤務時間が不詳の方が含まれるため、常勤と非常勤の合計は総数になりません。

薬局では28.3%、およそ4人に1人が非常勤で働いています。これに対し病院は11.7%で、9人に1人ほど。医薬品関係企業は7.7%、行政は3.4%と、さらに少なくなります。

「時間を調整して働きたいなら薬局」という話はよく言われますが、実際に非常勤が多く在籍しているかどうかは、この数字ではっきり分かります。制度があるかどうかではなく、すでにその働き方をしている人がどれだけいるか、という視点です。

逆に企業や行政を目指す場合は、フルタイム勤務が前提になりやすいと考えておいたほうが現実的です。雇用形態ごとの違いは「子育て中の薬剤師の職場選び」でも整理しています。

介護保険施設は例外的

介護保険施設は非常勤が78.8%と極端に高くなっていますが、全体で1,217人と規模が小さく、他の従事先と同じようには比較できません。数字としては参考程度に見てください。

4. 平均年齢と、女性の比率

従事先平均年齢女性比率
全体46.9歳62.0%
薬局46.8歳64.8%
病院42.5歳(最も若い)63.8%
診療所58.4歳87.2%
医薬品関係企業49.1歳42.7%
大学48.6歳29.2%
衛生行政機関等43.1歳49.0%

出典:厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」薬剤師 第1表をもとに当サイトで算出

病院の平均年齢42.5歳は、すべての従事先で最も若い数字でした。全体より4.4歳低くなっています。

また、薬剤師全体の女性比率は62.0%ですが、医薬品関係企業は42.7%、大学は29.2%と大きく下がります。理由まではこの統計から分かりませんが、従事先によって構成が違うことは事実として押さえておけます。

このデータを見るときの注意点

  • 基準日は令和6(2024)年12月31日です。この調査は隔年で行われるため、次の数字が出るのは令和8年分になります
  • 主たる業務の種別」による分類です。副業として別の場所でも働いている場合、その分は含まれません
  • ドラッグストアは、調剤を行う薬局として届け出ていれば「薬局」に、そうでなければ「医薬品関係企業(店舗販売業)」に入ります。ドラッグストアだけを取り出した数字ではありません
  • 学校薬剤師など兼務が前提の業務は、この分類では独立した区分になっていません
  • 常勤・非常勤の各行には勤務時間が不詳の方が含まれるため、常勤と非常勤を足しても総数になりません

まとめ:規模を知ってから、選択肢を考える

公的統計から見えたのは、次の4点でした。

  • 薬剤師32万9045人のうち、薬局60.0%、病院・診療所19.2%、医薬品関係企業10.4%
  • 企業は10人に1人。行政6,906人・大学5,011人と、数千人規模の選択肢もある
  • 年齢が上がるほど医療施設の比率が下がり、企業の比率が上がる(因果は不明)
  • 非常勤の割合は薬局28.3%、病院11.7%。働き方の柔軟さに差がある

「薬局以外にも道はある」という話は、規模が分かってはじめて具体的に検討できます。10人に1人の領域と、300人に1人の領域では、探し方も準備の仕方も変わります。

まずは主な職場の違いから整理したい方は「調剤薬局・病院・ドラッグストアの違い」もあわせてご覧ください。

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※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の求人状況や労働条件を保証するものではありません。統計値は調査時点のものです。最新の数値はe-Stat(政府統計の総合窓口)でご確認ください。