「大手のほうが給料がいい」というイメージは、薬剤師の世界でも根強くあります。実際のところはどうなのか、厚生労働省の公的統計を企業規模別に見てみました。結果は、多くの方のイメージとは少し違うものでした。本当に差がついていたのは、年収ではなく労働時間です。

企業規模別の比較データ

企業規模推定年収残業時間
(月)
平均勤続
年数
月額給与年間賞与
1,000人以上
(大手)
592.5万円13時間7.6年41.2万円97.9万円
100〜999人
(中堅)
614.2万円4時間10.4年45.3万円70.1万円
10〜99人
(小規模)
584.4万円3時間8.1年43.1万円67.8万円
全体599.3万円8時間8.8年43.1万円82.4万円

出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(職種)第5表をもとに当サイトで算出。推定年収は「きまって支給する現金給与額 × 12 + 年間賞与その他特別給与額」で算出したもので、統計に「年収」という項目はありません。

1. 年収の差は、意外と小さい

まず正直にお伝えすると、年収の差はそれほど大きくありません。最も高い中堅(614.2万円)と最も低い小規模(584.4万円)で、差は約30万円。大手は592.5万円で、3つのなかでは真ん中です。

「大手だから年収が高い」という関係は、統計上は見られませんでした。ただし差が30万円程度である以上、「中堅のほうが稼げる」と言い切るのも正確ではありません。年収だけで規模を選ぶ意味は薄い、というのが妥当な読み方です。

ただし、給与の「構成」は違う

内訳を見ると違いがあります。大手は月額給与が最も低く(41.2万円)、年間賞与が最も高い(97.9万円)という構成です。つまり大手は賞与への依存度が高い給与体系だといえます。

賞与は業績によって変動する部分なので、毎月の安定した収入を重視するか、賞与を含めた年間総額を重視するかで、見え方が変わります。この考え方は「薬剤師の年収交渉で確認すること」でも解説しています。

2. はっきり差が出たのは、残業時間

年収以上に差が大きかったのが残業時間です。

0 4 8 12 (時間/月) 13時間 4時間 3時間 1,000人以上 100〜999人 10〜99人

出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(職種)第5表

大手は月13時間、中堅は月4時間。その差は月9時間、年間にすると約108時間です。1日8時間労働に換算すると、年間で13日分以上の差になります。

年収がほぼ同じで労働時間だけが違うということは、時間あたりの待遇では中堅・小規模のほうが有利ということになります。年収の額面だけを比べていると、この差は見えません。

3. 勤続年数が最も長いのは中堅

平均勤続年数は、中堅が10.4年で最長。大手は7.6年で最短でした。

勤続年数が長いことは、一般的には定着しやすい環境であることを示唆します。ただし解釈には注意が必要です。大手は店舗数が多く採用も多いため、若手の比率が高くなり平均勤続年数が短く出やすいという事情も考えられます。この数字だけで「大手は続かない」と判断するのは早計です。

数字に出ない、規模ごとの違い

ここまで統計を見てきましたが、職場選びで大切な要素のうち、統計に表れないものも多くあります。規模ごとの一般的な特徴として、次のような点が挙げられます。

大手中堅・小規模
研修制度整っていることが多い職場による差が大きい
異動店舗数が多く、合わない場合に異動しやすい選択肢が限られる
福利厚生制度が明文化されていることが多い職場による
意思決定手続きに時間がかかる場合がある現場の声が届きやすい傾向

特に経験の浅い時期は、研修制度と相談できる先輩の存在が年収より重要になる場面もあります。規模はあくまで判断材料のひとつとして捉えるのが現実的です。

このデータを見るときの注意点

  • 「薬剤師全体」の数字です。調剤薬局チェーンの規模別ではありません。企業規模には病院・製薬企業・ドラッグストアなどに勤務する薬剤師も含まれます
  • 企業規模は「企業全体の従業員数」であり、勤務する店舗の人数ではありません
  • いずれも全国平均です。地域による差は含まれていません
  • 年代構成の違いが平均値に影響している可能性があります。年代別の水準は「薬剤師の年収は何歳でいくら?」をご覧ください

まとめ:規模より「その職場の実態」で判断する

公的統計から見えたのは、次の3点でした。

  • 年収は企業規模でそれほど変わらない(差は約30万円)
  • 残業時間は大手が月13時間、中堅が月4時間と差が大きい
  • 大手は賞与への依存度が高い給与構成

ただしこれらはすべて平均値です。同じ規模でも職場ごとの差は大きく、最終的には応募先の残業実態・給与構成・研修体制を個別に確認することが欠かせません。求人票だけではわからない部分は、転職サービスの担当者を通じて確認する方法もあります。

規模より、あなたが大切にしたい条件から選びませんか

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※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の年収や労働条件を保証するものではありません。統計値は調査時点のものです。最新の数値はe-Stat(政府統計の総合窓口)でご確認ください。実際の労働条件は必ず応募先の書面でご確認ください。